「OpenClawを動かしてみたいけど、自分のPCで動かすのはセキュリティが不安」「できればお金をかけずに試したい」——そんな方に向けて、XServer VPSの無料プランとOpenRouterの無料モデルだけで、OpenClawを完全無料で構築する手順をまとめました。
筆者が実際にこの構成で構築し、動作確認まで行った手順をベースにしています。つまずきやすいポイントや、公式ドキュメントだけではわかりにくい部分も補足しているので、はじめてVPSを触る方でも再現できるはずです。
この記事で構築する環境と「完全無料」の条件
まず「完全無料」の定義を明確にしておきます。この記事で構築する環境は以下の3つの無料要素で成り立っています。
- VPS:XServer VPS 無料プラン(メモリ2GBまたは4GB)
- LLMプロバイダー:OpenRouter の無料モデル(
openrouter/free) - OpenClaw本体:オープンソース(無料)
ただし、無料プランには制限があります。XServer VPSの無料プランはメモリ2GBまたは4GBから選べますが、2GBは4日ごと、4GBは2日ごとにコントロールパネルから手動更新が必要です。更新を忘れるとサーバーを継続利用できなくなるため注意してください。また、無料VPSはサポート対象外です。OpenRouterの無料モデルにも、1分あたり・1日あたりのレート制限があります。
これらの制限を許容できるなら、初期費用・月額費用ともにゼロでOpenClawを常時稼働させる環境が手に入ります。
事前に用意するもの
- XServerアカウント(XServer VPS公式サイトから作成)
- OpenRouterアカウント(openrouter.ai で無料登録)
- ターミナル(Mac標準のTerminal.app、WindowsならPowerShellまたはTera Term)
XServer VPS無料プランの申し込みとサーバー作成
無料VPSの申し込み
XServer VPS無料プランの申し込みページにアクセスし、アカウントを作成します。すでにXServerアカウントがある方はログインするだけでOKです。
サーバー作成時のOS選択では Ubuntu 24.04 を選びます。アプリイメージで「OpenClaw」を選ぶ方法もありますが、今回は素のUbuntuに手動インストールする手順で進めます。手動のほうが仕組みを理解しやすく、トラブル時にも対応しやすいためです。
rootパスワードは強力なものを設定してください。ブラウザのパスワード生成機能を使うか、以下のコマンドで生成できます。
openssl rand -base64 32 | tr -d "=+/" | cut -c1-16
パケットフィルターの設定
サーバー作成後、XServerの管理画面からパケットフィルター設定を開きます。
- VPS管理 → パケットフィルター設定 を開く
- 「追加する」をクリック
- SSH(TCP 22 / すべて許可)を追加
この時点でVPSのIPアドレスを控えておいてください。SSH接続に使います。
VPSへのSSH接続と初期設定
SSH鍵の生成と接続設定
ローカルマシンでSSH鍵を生成し、XServerの管理画面で公開鍵を登録します。
# SSH鍵の生成
ssh-keygen -t ed25519 -C "openclaw@xserver-vps" -f ~/.ssh/openclaw -N ""
# 公開鍵の内容を確認(これをXServer管理画面に登録)
cat ~/.ssh/openclaw.pub
このコマンドでは、ローカルPC上にOpenClaw用のSSH鍵ペアを作成しています。秘密鍵は自分のPCに置いたままにし、公開鍵だけをXServer VPSの管理画面へ登録します。
| 指定 | 意味 |
|---|---|
ssh-keygen | SSH接続に使う鍵ペアを生成するコマンドです。 |
-t ed25519 | 鍵の種類をEd25519に指定します。短くて扱いやすく、現在よく使われる方式です。 |
-C "openclaw@xserver-vps" | 鍵に付けるコメントです。接続には影響しませんが、後から何用の鍵か見分けやすくなります。 |
-f ~/.ssh/openclaw | 秘密鍵の保存先を指定します。この場合は ~/.ssh/openclaw が秘密鍵、~/.ssh/openclaw.pub が公開鍵になります。 |
-N "" | 秘密鍵のパスフレーズを空にします。自動処理は楽になりますが、PC側の秘密鍵管理には注意してください。 |
cat ~/.ssh/openclaw.pub | 公開鍵の中身を表示します。表示された1行をXServer VPSの公開鍵登録欄に貼り付けます。 |
次に ~/.ssh/config に接続設定を追加します。Hostname には先ほど控えたIPアドレスを入れてください。
Host xserver-vps
Hostname 000.000.000.000
User root
IdentityFile ~/.ssh/openclaw
~/.ssh/config に設定を書いておくと、毎回IPアドレスや鍵ファイルを指定しなくても ssh xserver-vps だけで接続できます。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
Host xserver-vps | 接続名です。ここで指定した名前を使って ssh xserver-vps と入力できます。 |
Hostname 000.000.000.000 | 接続先VPSのIPアドレスです。実際のIPアドレスに置き換えます。 |
User root | ログインするユーザー名です。XServer VPSの初期設定ではrootで接続します。 |
IdentityFile ~/.ssh/openclaw | 接続に使う秘密鍵ファイルです。先ほど -f で作成した秘密鍵を指定します。 |
初回ログインとパッケージ更新
# VPSに接続
ssh xserver-vps
# fingerprint確認が出たら yes と入力
# パッケージを最新にする
sudo apt update && sudo apt upgrade -y
sudo reboot
再起動後、30秒ほど待ってから再度 ssh xserver-vps で接続し直してください。
OpenClawのインストール
インストールスクリプトの実行
公式のワンライナーでOpenClawをインストールします。Node.jsが入っていなくても、スクリプトが自動でセットアップしてくれます。
curl -fsSL https://openclaw.ai/install.sh | bash
2026年4月24日現在、OpenClawの一部パッケージで依存関係の不具合が出る場合があります。インストール途中または直後にモジュール不足のエラーが出た場合は、いったんグローバルインストールを削除し、確認できている安定版を指定して入れ直してください。
npm uninstall -g openclaw
npm install -g [email protected]
セットアップウィザードの設定内容
インストールが完了すると、対話形式のセットアップウィザードが始まります。今回は以下の内容で設定しました。
| 設定項目 | 選択内容 | 補足 |
|---|---|---|
| セキュリティ同意 | Yes | 個人利用前提の同意 |
| Setup mode | QuickStart | 後から openclaw configure で変更可能 |
| Model/auth provider | OpenRouter (API key) | 無料モデルを使うため |
| Default model | openrouter/free | 無料モデルだけを使う設定。auto は選びません。 |
| Channel | Skip / 後で設定 | Discord連携はnoteで扱うため、この記事では設定しません。 |
| Search provider | Skip / None | Ollama Web Searchはnoteで扱うため、この記事では設定しません。 |
| Skills | No(スキップ) | 後から追加可能 |
| Hooks | Skip for now | 後から設定可能 |
OpenRouter APIキーの入力を求められるので、事前にOpenRouterのAPIキー管理ページで発行しておきましょう。Discord BotトークンやOllama Web Searchの準備はこの記事では行いません。
OpenRouterの無料モデルと制限
OpenRouterで無料モデルを使う方法は主に2つあります。
openrouter/free:OpenRouterが自動的に利用可能な無料モデルを選択する。手軽だが、どのモデルが使われるかは時期によって変わる- モデル名に
:freeを付ける:たとえばgoogle/gemini-2.0-flash-exp:freeのように、特定モデルの無料バリアントを指定する方法
今回のセットアップでは openrouter/free を指定しました。特定のモデルにこだわりがなければ、この設定が最も手軽です。
注意点として、OpenRouterやOpenClawの設定で auto(openrouter/auto / OpenClawでは openrouter/openrouter/auto)を選ぶと、無料モデルだけでなく有料モデルへ自動ルーティングされる可能性があります。完全無料で試す場合は、openrouter/free か、モデル名の末尾に :free が付いた無料モデルを指定してください。
OpenRouter公式のLimitsによると、無料モデルには2026年4月24日時点で以下の制限があります。
| アカウント状態 | 1分あたりの上限 | 1日あたりの上限 |
|---|---|---|
| 購入済みクレジットが10ドル未満 | 20リクエスト/分 | 50リクエスト/日 |
| 10ドル以上のクレジットを購入済み | 20リクエスト/分 | 1,000リクエスト/日 |
つまり、完全無料のままだと1日50リクエストまでです。OpenRouterに10ドル以上のクレジットを入れておくと、無料モデルの1日上限は1,000リクエストまで増えます。ただし、これは無料モデルの上限が増えるだけで、有料モデルを選べば通常どおりクレジットを消費します。追加のAPIキーや別アカウントを作っても、無料モデルの上限回避にはなりません。
また、人気の無料モデルは提供元側の混雑状況によって使えないことがあります。制限に達したリクエストや失敗した試行も日次上限に数えられる場合があるため、OpenClawのように短時間で連続リクエストが発生するツールでは、無料モデルだけだと途中で応答が止まることがあります。
動作確認とダッシュボード
Gatewayのステータス確認
OpenClawはGatewayというバックグラウンドサービスを通じて動作します。まずは正常に起動しているか確認しましょう。
openclaw gateway status
「running」と表示されればOKです。停止している場合は openclaw gateway restart で再起動できます。
ダッシュボードURLとトークンの確認
OpenClawにはブラウザベースのダッシュボード(Control UI)が用意されています。ダッシュボードのURLとトークンは以下のコマンドで確認できます。
openclaw dashboard
この記事ではダッシュボードURLとトークンの確認までに留めます。VPS上のダッシュボードをローカルブラウザから安全に開く方法は、SSHポートフォワードやTailscaleの説明が必要になるため、noteで詳しく解説します。
TUI(テキストUI)での確認
ダッシュボードの代わりに、SSHターミナル上でTUIを使って動作確認することもできます。
openclaw tui
TUIではメッセージの送受信やステータスの確認ができます。まずはここで「こんにちは」などと入力して応答が返ってくることを確認してみてください。
この記事で扱わない内容
以下の内容は手順が長くなるため、本記事では準備や設定方法を省略します。
- Discord連携:Bot作成、トークン発行、チャンネル許可設定はnoteで解説
- Ollama Web Search:検索プロバイダーの準備と設定はnoteで解説
- 日本語で応答させるための設定:
SOUL.mdの調整手順はnoteで解説 - ダッシュボードの安全な外部アクセス:SSHポートフォワードやTailscaleはnoteで解説
つまずきやすいポイントと対処法
OpenRouterで応答が返ってこない場合
セットアップ直後にメッセージを送っても応答がない場合、models.json のAPIエンドポイント設定が原因であることが多いです。
vi ~/.openclaw/agents/main/agent/models.json
ファイル内のOpenRouter関連の baseUrl を確認してください。
// 修正前(動かない場合がある)
"baseUrl": "https://openrouter.ai/v1"
// 修正後(/api を追加)
"baseUrl": "https://openrouter.ai/api/v1"
修正後は openclaw gateway restart で再起動してください。
パッケージ破損によるエラー
インストール直後に以下のようなエラーが出ることがあります。
Error: Cannot find module '@larksuiteoapi/node-sdk'
これはOpenClawのパッケージが破損している場合に発生します。2026年4月24日時点では、以下のように安定バージョンを指定して再インストールすることで回避できます。
npm uninstall -g openclaw
npm install -g [email protected]
バージョン番号は執筆時点のものです。最新の安定バージョンはnpmのOpenClawページで確認してください。
無料構成の限界と有料VPSへの判断基準
XServer VPS無料プランでOpenClawを動かすことは十分可能ですが、以下のような場面では有料VPSへの移行を検討したほうがよいでしょう。
- 2GBプランは4日ごと、4GBプランは2日ごとの手動更新が面倒になった
- 無料モデルのレート制限に頻繁に引っかかるようになった
- Skillsを複数追加してメモリが足りなくなった
- 業務で安定稼働が必要になった
有料プランに移行する場合、XServer VPSの2GBプランなら月額830円〜(36ヶ月契約時)で契約更新の手間がなくなります。ConoHa VPSやさくらのVPSも選択肢に入ります。まずは無料プランで試して、自分の使い方に合うか確認してから判断するのがおすすめです。
よく使うOpenClawコマンド一覧
| コマンド | 用途 |
|---|---|
openclaw gateway status | Gatewayの稼働状態を確認 |
openclaw gateway restart | Gatewayを再起動 |
openclaw dashboard | ダッシュボードのURLとトークンを表示 |
openclaw tui | ターミナルUIを起動 |
openclaw doctor | 環境の問題を診断 |
openclaw configure | 設定を対話形式で変更 |
openclaw onboard --install-daemon | デーモンとして再セットアップ |
よくある質問
- XServer VPSの無料プランはなぜ無料なのですか?
XServerが提供するトライアル枠で、有料プランへの導線として用意されています。機能制限はほぼありませんが、2GBプランは4日ごと、4GBプランは2日ごとにコントロールパネルから手動で契約更新する必要があります。
- OpenClawの月額料金はいくらですか?
OpenClaw自体はオープンソースで無料です。費用がかかるのはVPS(サーバー)の利用料とLLMのAPI料金です。今回の構成ではXServer VPS無料プランとOpenRouter無料モデルを使っているため、月額0円で試せます。ただし、有料モデル(Claude、GPT-4oなど)を使う場合はAPI利用量に応じた料金が発生します。
- OpenClawはどこで動かすのがよいですか?
セキュリティの観点から、メインPCでの実行は推奨されません。VPSや仮想マシンなど、隔離された環境で動かすのが安全です。本記事で紹介しているXServer VPSのような外部サーバーが最も手軽な選択肢です。
Discord連携やTailscaleまで含めた完全版はこちら
この記事では、XServer VPS無料プランとOpenRouter無料モデルを使ってOpenClawを動かす最短ルートに絞りました。実運用に近づける場合は、Discord連携、Ollama Web Search、Tailscale経由の安全なダッシュボードアクセス、日本語応答設定、トラブル時の復旧手順まで整理しておくと安心です。
それらを含めた具体的な手順は、noteの OpenClaw完全無料構築マニュアル【XServer VPS × OpenRouter × Discord × Tailscale対応】 で解説しています。
まとめ
XServer VPSの無料プラン、OpenRouterの無料モデル、そしてオープンソースのOpenClawを組み合わせることで、完全無料でAIエージェントの常時稼働環境を構築できます。
手順をまとめると以下の通りです。
- XServer VPSで無料サーバーを作成(Ubuntu 24.04 / メモリ2GBまたは4GB)
- SSH接続してパッケージを更新
- OpenClawをワンライナーでインストール
- OpenRouterのAPIキーと無料モデルを設定
- Gateway起動を確認し、TUIで動作確認
無料プランの更新頻度やOpenRouter無料モデルのレート制限は気になるポイントですが、「OpenClawがどんなものか試してみたい」という目的には十分です。まずは無料で触ってみて、本格的に使いたくなったら有料VPSや有料モデルへの移行を検討してください。


Comment